建具の種類と、間取りに合う建具選び

注文住宅の間取り作成で、家の住みやすさを左右するものの一つに建具の種類があります。部屋の広さ、生活動線、配置も重要ですが、建具選びも忘れてはいけない重要な要素の一つとなります。

建具は大きく分けて「開き戸」「引戸」「折れ戸」の3種類あり、そこからさらに細かく分かれています。それぞれの特徴を把握して適材適所の建具にすることが、住みやすい家の必須条件となります。

いぬ君
種類が沢山あるんだね。

開き戸のメリットとデメリット

開き戸とは、蝶番を軸として弧を描いて開閉する戸のことです。一言に開き戸と言っても、「片開き戸」「両開き戸(観音開き)」「親子戸」があります。

1枚の戸が開閉する戸を片開き戸といい、2枚の戸が開閉する戸を両開き戸といいます。両開き戸は、観音菩薩像を納めた厨子の戸に用いられていたことから観音開きとも言われています。

そして、両開き戸でも2枚の戸の大きさが違う戸を、親子のように見える事から親子戸といいます。親子戸は戸建ての玄関でよく使われていて、小さい戸の方は普段固定している事が多いです。

開き戸のメリットは、他の戸と比べて気密性が高いことにあります。力が弱い6畳用エアコンを使う部屋ならば、気密性が高いと熱が逃げにくく、寒さ対策・暑さ対策になります。また、気密性が高いと外に漏れる音の音量も軽減されます。

そして開き戸のもう一つのメリットは、戸に使う壁が少なくて済むということがあります。引戸の場合、幅半間(910mm)の戸に対して、幅1間(1,820mm)の壁面を使います。それに対して開き戸は幅半間なら、半間の壁面があればOKです。

狭い部屋の場合、コンセントの位置・テレビボードの設置場所で悩みますが、開き戸にしておけば壁面が広く使えて、配置に困る心配がなくなります。

いぬ君
開き戸ならペットドアを付けることも出来るよね。

開き戸のデメリットは、戸の開閉部分がデッドスペースになるという事です。廊下側に開く外開きならば気になりませんが、部屋側に開く内開きの場合、部屋の0.5畳がデッドスペースになります。

そして、廊下側に開く場合は、戸を押し開けた先に人がいると怪我をさせる心配があります。戸の向こう側に何があるかは見えないので、不意に開けた先に人がいた場合、相手に怪我をさせてしまいます。

階段付近の開き戸は特に危険で、戸にぶつかった後、階段を転げ落ちてしまい、大けがに発展する可能性もあります。
開き戸親子戸

引戸のメリットとデメリット

引戸とは、古来の日本住宅でよくみられる戸で、溝やレールを横にスライドして開閉する戸のことです。引戸にも、「片引戸」「片引戸2枚建」「引違い戸」「引込み戸」があります。

1枚の戸が横にスライドする戸を片引戸といい、2枚の戸が横にスライドする戸を片引戸2枚建といいます。3枚になれば片引戸3枚建です。

片引き戸は戸が壁面に収納されますが、戸を開けた時に2枚の戸が重なる戸を引違い戸といいます。押入れや障子でよくみられる戸です。

そして引込み戸は、戸が壁の中に収納される戸になります。

引戸のメリットは、開口部分が広く使えることにあります。リビングに面した部屋の戸を引戸にすれば、戸を開けた時にリビングと一体化した部屋として使えます。また、開き戸と違いデッドスペースも生まれなく、部屋を上手く使う事が出来ます。

引戸のデメリットは、使える壁面が減るということにあります。壁面が減ると、コンセントの設置場所が減り、家具の配置場所が減ってしまいます。ある程度使える壁があると、家具の配置が楽になり、中央部分のスペースを広く使えることが出来ます。

壁面のデメリットをなくした、引込み戸もありますが、引込み戸はリフォーム時の戸交換に苦労します。戸を交換する為には壁を壊さなければいけません。

片引き戸2枚建引込み戸

折れ戸のメリットとデメリット

折れ戸とは、開いた時に折りたためる戸になります。クローゼットなどでよく見かける戸です。

折れ戸のメリットは、少ないデッドスペースで大口の開口部が得られることにあります。1間(1820mm)の収納を両開き戸にすると、収納前の1間がデッドスペースになります。引違い戸にすると、片方しか開口できず、戸を開けた時の間口は半間になってしまいます。

折れ戸のデメリットは、気密性が弱く、反対側からは開けにくいという点があります。反対側から開けない収納は問題ありませんが、両方向から出入りする戸としては不向きになります。

用途に応じた建具選び

・廊下とリビングが面する戸
廊下とリビングが面する戸のオススメは親子戸です。リビングは大きい荷物を運ぶ機会が多いです。片開き戸だと、ソファーや冷蔵庫を運ぶとき、戸を外さなければ荷物が通らないなんてこともあります。親子戸にしておけば、大きい荷物を運ぶときは子の方も空ければ開口が広く使えます。

片引戸2枚建でも広い開口を得られますが、片引戸2枚建は気密性が弱く、玄関から入ってくる冷気を遮ることが出来ません。

さらに、親子戸のデザインでは、向こう側がうっすら見られるアクリル入りスリットデザインにすることもお勧めです。人の出入りが多いリビングなので、戸を開けた時に向こう側にいる人に怪我をさせる心配もありません。

・トイレの戸
トイレの戸のオススメは片開き戸です。我が家はトイレが2つあり、一つが片開き戸で一つが片引戸です。家を建てた後に知ったのですが、トイレの内側に収納される片引戸は、トイレで具合が悪くなり、戸の方に倒れた時、外から戸が開かないリスクがあります。

しげ雄
設計を一つミスりました。

そして、片開き戸でも内側に戸が開く内開きに設計にしてしまうと、片引戸と同じく戸が外から開かないリスクがありますので、廊下側に開く外開きにするのが良いです。

・寝室・子供部屋の戸
寝室・子供部屋の戸のオススメは片開き戸です。寝室・子供部屋はプライバシーを確保できるように遮音性のある開き戸が良いです。夜寝る時、リビングから漏れる音を気にせずに寝られます。また、寝室・子供部屋はエアコンが小型のエアコンの場合が多い為、戸に遮熱性も求められます。

・洗面室の戸
洗面室の戸のオススメは引込み戸です。洗面室は狭いスペースなのにコンセント・洗濯機・洗面台・脱衣カゴ等、壁を必要とするものが沢山あります。開き戸でも良いのですが、洗面室の近くにトイレを配置している事が多いので、引込み戸にしておけば戸同士がぶつかる心配もありません。

・リビングと客間(畳コーナー等)が面する戸
リビングと客間が面する戸のオススメは片引戸3枚建です。お客様が泊まるとき以外は客間として使用しないので、普段は開けておいてリビングと一体化して使えます。引違い戸だと1面に戸が見えてしまうので、3枚とも収納できる片引き戸3枚建が良いです。さらに、戸を吊り戸にしておくことをオススメします。

・収納の戸
収納の戸のオススメは折れ戸です。昔の収納(押入れ)は引違い戸が一般的でしたが、引き違い戸は片方しか開けることが出来ず、収納の中身を探す時、大口に開口できる方が楽です。

折れ戸は開口が広く、開き戸と違ってデッドスペースも生まれないので、部屋の中にある収納にはピッタリです。

まとめ

建具の種類は沢山あり、紹介した建具以外にも、「引分け戸」「スライド回転ドア」といったものもあります。建具選びは家の住みやすさを決定する重要なものなので、生活動線をしっかりとイメージして選ぶと良いです。