注文住宅で「値引きは可能か?」というと、ほとんどのハウスメーカーで値引き交渉は可能です。むしろハウスメーカー側も値引き交渉をされる前提で見積書を作っているので、値引き交渉をしない手はありません。
但し、値引き交渉が全く出来ないハウスメーカーもあり、一条工務店は値引き交渉が一切できない事は有名です。これを、適正価格で販売していると感じるか、強気の営業と感じるかは人それぞれですが。
なぜ値引き交渉が可能かというと、ほとんどのハウスメーカーでは、営業の給料体系は固定給+歩合給になっていて、固定給は最低賃金程度で、歩合が無ければかなりシビアな世界となっています。その為、ハウスメーカーの営業は、1棟でも多く契約を取りたいと思っていて、値引きをしないでお客様を逃すくらいなら、多少の値引きをしてでも契約を取りに行きます。
相見積もりは取った方が良い?
値引き交渉術で「相見積もりをとる」という方法は良く聞くと思いますが、個人的にはあまり好きではありません。相見積もりは、家を建てる気がないハウスメーカーに行って見積もりを貰う訳ですが、家を建てる気が無いハウスメーカーに労力を使わせるのは失礼だし、自分の時間を時給換算、日給換算した時に、ハウスメーカーから見積もりを貰う事は労力に対してあまり効率的とは言えません。
さらに言えば、営業目線から言えば相見積もりを持ってこられる方は成約しやすいという事はご存知でしょうか?なぜなら、競合先の相手が分かっていれば営業も対応を講じる事が出来るからです。
ある程度売れている営業であれば、競合先の「どんな資材・設備を使っているのか」「どのような工法で家を建てているのか」「家を建てた人の口コミ」など調べている事でしょうから、競合先の見積もりを見て、相手を落とすことなどたやすいことです。
それでも相手が落ちなければ、競合先の見積もりより安いプランを出せばよいわけで、安いプランは設備や間取りを変えるだけで簡単につくれます。新しいプランを見て、値引きをしてもらったと思うかもしれませんが、これはグレードダウンであって決して値引きでは有りません。
例えるなら、スーツ屋で49,800円のスーツを見ていて、予算が無いことを話すと29,800円のスーツを提案してきたのと同じことです。
値引きを引き出す為の交渉術
ハウスメーカーから値引きを引き出すには、いくつか手順を踏まなければいけません。手順に沿った流れでなければ最大限の値引きを引き出すことは困難になってきます。
Step1
値引き交渉の1段階目は、まずは自分が見込み客だと思ってもらう事です。ハウスメーカーのモデルルームは週末になればしょっちゅう集客イベントを行っています。「来店者全員にクオカードプレゼント」、「見積もり依頼で粗品プレゼント」、集合展示場であれば、「ハウスメーカーを巡るスタンプラリー」などなど。
イベントを行えばモデルルームに人が沢山来ますが、知り合いの住宅展示場で働いている方の話では、イベントに来られる方は暇つぶし、粗品目当ての方ばかりで、イベントでは同じ方ばかり来るそうです。
家を建てる気がない人に営業マンが熱心に営業をかけに来るわけがないので、まずは自分が家を建てる見込み客であることを伝える必要があります。
Step2
自分が見込み客だと伝わったら、営業さんに愛嬌を振りまく事も大事です。営業さんも人の子です。「客の方が立場上だぞ!」等という高圧的な態度の人に値引きをしてまで家を売ろうとは思いません。
注文住宅は完成するまでに1年近くかかります。1年間も嫌な客を相手にしないといけないなら、進んで営業をかけようとは思わないですよね。しかも、家は完成してからもお客とつながりがあり、今後ずっとそのお客様と寄り添っていかなければいけません。
Step3
営業さんと仲良くなったら、いよいよ値引き交渉の時期です。先程、相見積もりを見せる事は効果的ではないと話しましたが、他社でも検討している事を伝えることは必要です。但し、決して他社の情報出してはいけません。「他のハウスメーカーも何社か見てみようと思っている」「さっき行ってきたハウスメーカーも気になっている」など、具体的な社名を出さずに他社も検討してことだけを伝えるのが良いです。
営業さんにとって一番困ることは、相手が何で悩んでいて、何が決め手か分からない事です。「当社の何が駄目ですか?」とは聞きにくくても、「他社の見積もりやプランニングで引っかかっている点はありますか?」とは聞きやすいものです。
営業さんの立場からすれば、お客様の「引っかかっている点」を解消してあげれば良いわけで、「引っかかっている点」が分からないと【価格勝負】だと勝手に思い込んでくれます。
この【価格勝負】という思い込みは売れない営業マンほど傾向が強く、こちらから値段の話をせずとも、相手から「いくらなら契約してくれますか?」「いくら値下げをすれば契約しますか?」「○○円値下げするのでどうですか?」等と言ってきます。
Step4
営業さんから具体的な値引きの提示があっても、まだ契約をしてはいけません。さらに値下げやサービス付与の余地はあります。
なぜなら、営業にとって早い段階で契約がとれるかはとても重要で、早い段階で契約が取れなければ、上司から「なんで契約取れないの?」「あのお客さんどうなっているの?」等と詰められてしまいます。
なので、早い段階で決めきれない事は営業さんにとってストレスで、ストレスを解消するために更なる値引きを提示してきます。
私が家を契約した時は、「今月中に決めてくれたら○○円にします!」と言ってきましたが、私はこの提案をスルーし、「今月は決める予定が無いので、来月に契約した場合の金額を教えて下さい」と言い返した所、営業さんも困って「来月でも同じ金額でも良いですよ」と言ってくれたのでその場を後にしました。
具体的なプランが決まっていても、契約を宙に浮かしておくことによって、さらに値引きを引き出す事が出来ます。その後、営業さんから「もう少し頑張ります」と必ず連絡が来ます。
なぜなら、営業さんは見込み客に対して契約を取る為に電話をしなければいけません。しかし電話をすると言っても、用件もなく電話はしづらい物で、何かしらの電話をする口実を作らなければいけません。
そんな状況でも営業さんは見込み客に電話をしなければいけません。その電話をする為の口実が「値段を下げます」「ここを無償でグレードアップします」になる訳です。
値下げ交渉でこれだけはやってはいけない事
ハウスメーカーとの値下げ交渉でやってはいけない事は2つ。1つは少し前に話しました、値引きとグレードダウンは別物だという事。
値段を下げる為にプラン変更でグレードダウンしては、せっかくの新居が住みにくい家になってしまいます。安い資材の質はたかが知れていて、これから何十年も住む家なら尚更しっかりとした材質で家を建てた方が良いです。
そして、やってはいけない事の2つ目は、値引きのタイミングは契約直前しかないという事です。
注文住宅、結婚式、公共工事は契約後にどんどん値段が上がっていくものです。他の業種では考えられない事ですが、最終支払金額が決まっていないのに契約するなんて信じられないですよね。でも、注文住宅はこれが通常化している悪しき風習があります。
ここで重要なのは、ハウスメーカーとの契約後の値引き交渉は一切出来ないという事です。何故なら、ハウスメーカーからしてみれば、契約後に値引きをする必要が全くないからです。
契約前であれば、値引きをしなければ他社に話が流れてしまいますが、契約してしまえば値引きをしなくても契約が流れることは有りません。値引きをしなくて契約が流れる可能性は0では有りませんが、打合せが少しでも進んでいれば、ハウスメーカーは違約金と損害金を請求できます。
なので、値引き交渉はある程度仕様や設備を決めた見積もりを貰ってからがベストです。
・こだわりのキッチンがある
・浴槽サイズは広い方が良い
・置きたいカップボードがある
・高級クロスを貼りたい場所がある
・エコカラットを貼りたい場所がある
・コンセントが沢山ほしい
こんな要望があるようでしたら、契約前に見積もりに入れておいてもらえれば、グレードアップを含めた金額から値引き率で値引きしてもらえるので、値引き金額が大きくなります。
(基本工事プラン×値引き率)=値引き額
(基本工事プラン+グレードアップ)×値引き率=値引き額
さらに、仕様や設備を決める前に大幅値下げを提示されても、それはハウスメーカーの思うツボなので注意して下さい。
何故なら、契約後の値引きは一切ないと話しましたが、それは言い換えれば契約後のグレードアップの金額はハウスメーカーの言い値だという事を意味します。契約前に大幅値下げをしているお客様に対して、グレードアップ分を割高で提示することなど良くある事です。
まとめ
注文住宅の値引きは営業さんとの駆け引きです。こちらが買う気満々で商談に望めば、「値下げをしなくても決めてくれる」と思われ、大幅な値下げを引き出すことが難しくなります。
値引き交渉の駆け引きは、相手に「あとちょっとで契約してもらえる」と思わせる、丁度良い思わせぶりな態度が効果的です。
また、値引き交渉するチャンスは契約前の1度きりなので、時期を見誤ると高い金額で家を建てる羽目になります。今回紹介した交渉術は、注文住宅に限らず車を買うとき等にも応用が出来るので、是非活用して下さい。